「ディアッカお誕生日SS」



誕生日の翌々日大きな荷物が届いた。大きな箱で宅配の人が「重いですよ」と言うので奥まで運んでもらう。
ディアッカが買った物らしい。
「何を買ったのかしら?」
とても気になったがディアッカの荷物なので開ける訳にもいかず、お夕飯の仕度もあったのでそっちにとりかかり、本人が帰ってくるのを待つ事にし
た。


帰宅したディアッカに荷物の事を伝えるととても嬉しそうに笑っている「ねぇ、何買ったの?」
「今は内緒。後で開けるから楽しみにしてて」と軽いキスを落とした。


夕食後、ディアッカに手を引かれ箱の隣に座らせられる。
「この前言ったろ、ミリィに浴衣買うって。昨日店行って似合いそうなのいくつか買ったんだ。見てたら楽しくなってつい色々買っちゃってさ」と箱の中
からさらに紙に包まれた物を丁寧に取り出し包みを広げると中からとても美しい光沢を放つ色鮮やかな織物が現れた。他の包みも同じように開け
るとシルクのような手触りの淡い色の布、綿のシンプルな紺の布が2枚、同じ綿の白地に花が咲いている布が1枚、同じく綿素材で可愛らしい模様
の入った薄紫色の布が1枚出てきた。
それに小物や綺麗な組紐、何に使うのか全く分らない物がいくつもいくつも箱から出てくる。
私は初めて目にする物たちに「何コレ?何コレ?」と次々手にとって眺めた。


「これが浴衣でこれが帯。これ羽織ってこれを巻いて着るの。で、これは下駄でこれが巾着。靴にバックね」
「これ靴なの?トングみたい。木のトングと布のトング」
「そうだな、トングはこれが原型なんだと思うよ。こっちの木の方は浴衣と合わせる、こっちのは訪問着と」
「HOUMONGI?」
「こっちのツヤツヤとした手触りのいい着物。お出かけ用って考えればいいかな、これと合わせるの」
「そんなのも買ったの?」
「いや、買う気はなかったんだけど、店の人と話してたらさ、奥からいい着物出してきてくれて、これがまたミリィに似合いそうだったからついね。
で、こっちは俺の」
「ディアッカも買ったの?」
「だってミリィが着るなら俺も一緒に着たいし、踊り教えるから浴衣も必要だし。そのうち着物で出かけような」
2人で着物を着て歩けるのを想像したら嬉しくなって「うん」と応えてしまった。


部屋中に広げられた小物たち。着物を着るって大変なのかなーと思って見ていてふと気付く。
「ディアッカ、こんなにいっぱい買ってコレいくらしたの?」
なんの気なしに聞いたがディアッカは沈黙している。
「ディアッカ?」
「・・・まぁ値段なんていいじゃん」と私から視線を反らす。
とても嫌な予感がする「ディアッカ!」
「・・・えっと、まぁミリィが思っているより若干高いくらいかな。でも着物にしては安いほうだし、ミリィの初めての着物だから質の悪いのは着せたくな
いしさ。これくらいの買い物別に無理した訳じゃないから」
「・・・・・・・・・・・」


私は顔が引きつるのを止められなかった。
着物に目をやる。この訪問着とやらはとても手触りが良く美しい色合いをしている。価値など全く分らないがどうみても私の1か月分の給料で買え
る品物ではないように思える。
ディアッカは幼い頃から上質なものに囲まれて育ってきたので物を見る目は充分に培われている。質の悪いものに目をつける事はまずない。
この着物と帯、これだけで・・・・・・・。
それに私の浴衣4着に帯に小物たち、他ディアッカが自分用に買った着物と浴衣1着づつに小物たち。
単純に考えても車1台分はいってるであろう。それなりのクラスの車1台分。
そんな買い物を昨日1日、いや仕事帰りの2時間くらいで使ってきたっていうの!?
目眩がしてきた。
気を失いそう・・・・・・・。


妻がそんな事でクラクラしている間、ディアッカは値段のことなどすっかり忘れミリアリアに着物を着させる事(脱がせる事も含む)でウキウキしてい
たが、ミリアリアが黙り込んだかと思うとサーッと顔色を悪くさせたので慌てて抱き寄せ声を掛けた。
「ミリィ、どうしたんだ?大丈夫か?」
「あなたのせいでしょ!!」と言ってやりたかったがそんな言葉すら言う事が出来ず、さらに顔色を悪くさせた私をディアッカは抱き上げ寝室に急い
で運んだ。


さらに数日後。
着物は未だ箱に入ったまま。汚したりしたらと思うと箱から出す気にならない。でもディアッカの誕生日はどんどん近づいてくる。
「やるわよ!!」と言ってしまった手前いい加減行動を起こさねばなるまい。
ディアッカが帰ってきたら教えてもらえるか聞いてみよう。


「ディアッカ、疲れているのに悪いんだけど、踊りを教えて欲しいの」
そう言うとディアッカの顔がパァッと輝いた。
「今日?もちろん!じゃあ食事が終わったらすぐね」
「うん。ゴメンね、休ませてあげられなくて」
彼の思惑に全く気がつかないミリアリアはディアッカの体のことだけを気づかった。


「こっち来て」寝室の鏡の前に連れてこられた。
「踊りの前に浴衣着れる様にならないとね」
「はい」
「じゃあ今日はこの浴衣」と白地に黒で菖蒲が散らばった着物に薄紫の帯を選ぶ。さらに「浴衣の下にはコレを着るの」と白い上下を渡された。
「何コレ?」
「肌襦袢と裾よけ。まぁ下着みたいなも、汗かくからね。これ色っぽくないから好きじゃないんだけど」
色っぽいとか関係ないんじゃないの?と思ったが口には出さなかった。
「じゃあミリィ服脱いで」
「えっ?嫌よ!」
「あのねぇ、浴衣に着替えるんだから」


「・・・・分ったわよ、こっち見ないでよ!」
「ハイハイ、分りましたよ」と後ろを向いたが向こうで腑に落ちないとばかりにブツブツ文句を言っている。「夫婦なんだからいいじゃねぇか別に。夜
いつも裸のくせに」


「ミリアリアさん、いいですか?」
「いいわよ・・・」
振り向くとガウンを羽織ってこちらに寄ってきた。その姿に手を出したい思いに駆られるが今日の目的を果たさねばならないのでグッと堪えた。
肌襦袢と裾よけをつける、やはり色っぽくない。ミリアリアもそう感じたらしく鏡を見ながら「うわぁ」と声を上げ眉をしかめた。
「色っぽくないだろ」
「確かに、これは人に見せられないわね」と苦笑いをしている。


浴衣を羽織らせ色々レクチャーをしながらミリィに合う様に調節をしていく。衿を整える頃にはすでに苦しそうな感じになっていた。
「ミリィ苦しい?」
「うん、さっき紐で締めたのがちょっと」
「でも腰紐しっかり結ばないと崩れてみっともなくなっちゃうから。後で自然と緩んでくるから我慢してね」


次に帯に取り掛かる
「コレも自分で出来るようにならなくちゃいけないからよく見てて。これは文庫って結び方で・・・」と話しながらディアッカが胸の下で帯を結び始め
た。じっと手
つきを見ているが折ったり巻いたり結んだりして段々リボンのような形になっていくのがマジックのように思えた。
結び終えるとそれをグルリと後ろへ回した。


「はい、出来上がり」言われ鏡を見ると、写っているのは私だけど私じゃないみたいで鏡の傍に確かめに行ってしまった。
「ミリィよく似合ってる」
「なんか自分じゃないみたい・・・」
ディアッカはとても嬉しそうにニコニコと笑っている。
私も見た事の無い自分の姿にはしゃぎまくった。
帯をちゃんと見たくて他の部屋から鏡を持ってきたり、初めての浴衣姿を写真に撮ったり、洋服のように歩けないんだなと思いながらも無駄に部屋
を歩き回ったり、くるりと回ってみたりと子どものようだった。


暫くしてから「そうだ、踊り!」と本来の目的を思い出す。
「ディアッカ、ごめんね。踊りを教えてください」
ディアッカはクスクス笑いながら「気にしないで。俺も子どもみたいなミリィを見れて楽しんだから」と私の手をとり再び鏡の前につれて来られた。
「あれだけはしゃいでも崩れなかったね」衿や帯をちょっと触りながらそう言った。
私は鏡越しにニッコリ笑い「先生がいいのね」
「ありがとう、ミリィ」



その後何も言わず何もアクションを起こさないディアッカを不思議に思い「ディアッカ?」と声を掛ける。
それが合図のようにディアッカがうなじにキスをしてきた。
「きゃっ!ちょっと!!」
「ミリィ、もう限界・・・」
「ヤダ、やめてよ!踊りっ・・・」
叫びは途切れた。ディアッカに唇を塞がれ苦しくなった所で衿元から手が入り気付いた時には浴衣ははだけた状態になっていた。


後日、「ちゃんと踊り教えるから」と言うディアッカの言葉を信用して彼に着付けをしてもらうも『踊り』に行き着くことは一度も無く、激怒した私は「もう
二度と着物は着ない!!」と宣言をした。
するとディアッカは「俺の誕生日に踊るって約束はどうなる訳?」逆に嫌味のように言ってくる。
「アンタ教えるって言っといてちっとも教えてくれないじゃない!」
「だってミリィ、ちゃんと着れないから俺が綺麗に着させようとやって上げてるんじゃん」
「ならそれがどうして脱がす事になるのよ!」
「それは着物姿のミリィが色っぽいからさ、仕方ないでしょ男としては」
何が男としてはなのだ!「とにかく踊り教えてよ!踊るのなんて普段着でもいいでしょ!ほら早く!!」
「ダメだね、日舞すんのに普段着でなんて考えらんない。浴衣じゃないなら教える気になんないね」


この言葉に私は怒りで体を振るわせた。
「もういい!ディアッカになんて頼まない!浴衣くらい自分で着れるんだから!!」
「ふーん。じゃあ、俺の誕生日までにきちんと着れるようになってよね。そしたら俺も途中で手を出さないって約束するよ。でもできなかったらその日
は俺の言う事聞いてもらうよ」
「いいわよ!負けないんだから!!」と言い放ちドタドタと足音をさせて出て行ってしまった。
あそこまで怒らせたのは久しぶりだな。けど「まぁ、無理だろうな」
この日、『踊る』という約束は遥か彼方に消えていった。


あの後、浴衣を見るとディアッカの人を小馬鹿にした顔が浮かんでくるので暫く目に着かない所にしまい込んでいたが、何としても鼻を明かしたいと
思い取り出して自分で着ようと試みた。既に誕生日まで2週間を切っていた。
『浴衣の着付け 基本編』など本を見ながら何度もやってはみるがディアッカが着せてくれたようには上手くいかなかった。
仕事も家事もあるので着付けも毎日出来る訳ではないがソレを言い訳にはしたくない。
ディアッカに白旗を揚げさせる事だけを目標にミリアリアは時間を作り着付けをマスターしていった。


ディアッカは妻の負けず嫌いパワーを侮っていた事を知る。
誕生日当日、仕事から帰ったディアッカを出迎えたミリアリアは見事に浴衣を着付けていた。帯も文庫にし注意する箇所は1つもありはしなかった。
「お帰りなさい、どおこれ?」
「参りました」
「フフフ、やったわ!!」とガッツポーズ。
「ミリィ、浴衣でガッツポーズはやめて・・・」
「はーい。ディアッカ、はやく着替えて食事にしましょ」
ジャケットを脱ぎハンガーに掛けているとミリアリアが俺の浴衣を手にしてきた。
「折角だからディアッカもこれ着ない?」
「そうだな、誕生日を浴衣で過ごすのもいいかもね」
「向こうで待ってるから」
楽しそうに笑いながら扉を閉めていったミリィの期待に応える為、浴衣を羽織り帯を締めた。


「ディアッカ、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。ミリィ、俺の浴衣姿はどう?」
「うん、とても似合っているわ。出てきた時見惚れちゃった・・・・」
「ありがとうミリィ。ミリィもとても綺麗だよ」
頬をほんのり赤く染めて微笑むミリアリアの顔は何よりも美しかった。

自分の誕生日を大切な人と迎えられる喜び、普段の何気ない時にも幸せを感じるが誕生日はまた特別なのかもしれない。
こうやって一緒に1年づつ年を重ねていく時間。
永遠に続いて欲しいと願う。
























ジョリコ様から!
素敵、嬉しの頂き物です。
うふふ、いいですよね、浴衣・着物脱ぎ脱ぎ(何かがずれてるおかや)
更におまけの、かわいい小品が↓に・・・ららら〜






















休日のブランチの後、散歩に出掛ける事にした。
目的など無いが暖かい光の中を2人で手をつないで歩くのはとても心地がいい。
ふとあるポスターの前でミリィの足が止まった。それはバラ園のポスターで、ここから少し歩いた所に最近出来たものらしかった。

「バラ園ができたのね」
「そんなに遠くないみたいだな」
彼女があまりにもポスターを見つめているので、俺も眺めているとある事に気付いた。

「きれいね、この色」と言いながらポスターに手をやり、とても愛しそうになでている。
「ミリィ、この色好き?」とても気になって聞いてみた。
「うん、この色ディアッカの目の色」と恥ずかしそうに小さな声で呟く。
「ありがとうミリィ。俺はこっちのバラの方が好きだな」ともう片方のオレンジ色に近いバラの方をなでる。「これはミリィの色。いつも暖かい光を放っ
て俺の隣にいてくれる、ミリィの光の色」
そう言うと大きく目を見開いてうつむいてしまった「・・・よくそんな事恥ずかしげもなく・・・・・・・・」
「俺には本当の事だから」
「・・・ありがとうディアッカ」

「今から行こうか、バラ園」
「今から?間に合うかな?」
「いいじゃん、ダメならまた行けばいいんだし。急ぐ事ないでしょ」
「そうよね。急ぐ必要ないのよね」
私の言葉に優しい紫の瞳が笑って応えてくれた「じゃあ、行こっか!」
「うん!」

午後の暖かい日差しよりもっと輝いている彼女の笑顔にドキドキしながら歩き始めた。













これらこそお誕生日SSだすわぁ。
ああ、甘いの書きたい、でも書けない・・・がうう〜
ジョリコ様、感謝!!
















































貯蔵庫5



トップへ
戻る



M様2