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「ねぇ、ディアッカってこーゆーのやってたんでしょ?」
ミリアリアにそう声を掛けられたので振り向くと画面では能楽が放送されていた。
「ん、これとはまた違うんだよ。これは能、俺がやっていたのは日本舞踊」
NOU?NIHONBUYOU?ミリィの頭の上に?マークが散らばっているのが良く分かる。すぐ表情に出るから見ていて
飽きない。字はこう書くのと見せてあげたが?マークは消えていない。
「ミリィは日本の伝統芸能は見たこと無い?映像でも」
「映像は見た事あるわよ。女の人がKIMONO着て踊ってるの。顔を真っ白くしてルージュつけ てるから驚いちゃった。
もしかしてディアッカも顔に白いの塗るの?」
想像したら物凄いモノが出来上がり吹き出してしまった。
ミリィがプッと吹き出したと思ったら肩を震わせ笑っている。何を想像したのか容易に
分かった・・・俺の趣味にあらぬ誤解をされないよう説明せねばなるまい。
コホンと咳払いを1つ。
「ミリィ言っておくけど俺はあーゆー格好しないからね」
涙を浮かべている彼女にそう聞かせる。
「あーゆー格好をするのはホンの一部の人だけ。殆んどの人は素顔で着物着て踊るの、それ 俺が着るのはあんなに
鮮やかでなくてもって地味な色合いのモノで下は袴ってゆってズボン みたいのを着用する」
そう説明したけどミリィの頭上には益々?マークが増えたようだ。
「本当は口で説明するより見せて上げた方が分かり易いんだけどな。俺、着物持ってこなかっ たし。で、今見ているの
は能。日本舞踊とはまた違うんだ。これは第三次世界大戦よりはる か昔から伝わってる踊りというかお芝居というか そういうモノ」
「そんな昔からあるの!?」
「すごく歴史のあるものなの。能が出来上がったのはA.D時代1300年代だけど原点は700年 代まで遡る。この人お
面被ってるだろ、これも昔に作られたものを大切に使ってるんだ。着物 も1600年代のものを着用する時もあるみた いだよ、もちろん全部が全部古い物って訳でも ないだろうけど」
ミリアリアの瞳がこれでもかというくらい大きく開かれていて驚いているのが分かる。
「この面もきっと百人以上の人間が着用してると思うよ、つばも汗も涙も付着してるけど能楽に 携わってる人にはとて
も神聖なものなんだ。オーブも古くから伝わっているものってあるんじ ゃない?プラントにこういう歴史はないから俺 は余計に惹かれるのかもしれないな」
私は自分の国の歴史もちゃんとは覚えていないし他の国の歴史なんて知ろうとはしなかった。途中からヘリオポリスに
移ったりしてなおさら。これはいい機会なのかもしれない。オーブの歴史・地球の歴史を勉強しよう。学んで損すること は無いしいつか役に立つ時があるかもしれない。イザークが民俗学に精通していると聞いている。彼に聞いたら色々と 教えてくれるかも。
ミリアリアは後悔した。ディアッカに内緒でイザークにお願いしたので話し始めたら止まらないという事を全く知らなかっ
たのだ。仕事の邪魔にならないようにとお願いしたのに自分の趣味の話が出来る機会を得たイザークはあんな事もこ んな事も話そうとリストアップしてきた。以前ディアッカ達に話をしたら途中でメンバーが抜けたり居眠りする輩が続出し たりしてとても気分の悪いものになった。軍人のくせに人の話を聞く事も出来ないとはなんと情けない奴らなのか。ミリ アリアはそんな事もせずきちんと聞いてくれるのでいい人材を見つけたと思った矢先ディアッカに横槍を入れられた。
ディアッカが帰宅したらミリアリアがいなかった為慌てて電話をしたらイザークと一緒だと言う。俺に内緒で!と思い急い
で2人の元に向かう。行くとそこではイザークの民俗学講座が行われておりミリアリアが帰るに帰れない状態だと分かっ た。
「イザークもぉいいだろ、ミリィも疲れてるだろうが。つまんない話を延々すんなよ!」
「なんだと!つまらないとはどおゆう事だ!!貴様にはつまらん話でもミリアリアは知りたいと 思って俺の所に来たん
だろうが。まだ話の途中だ!邪魔だ!出てけ!!」
「ミリィと一緒にな。疲れてる事くらい察しろよ!とにかく今日はここまでだ、ミリィ帰ろう」
「うん」(グッタリ)
「次からは俺も一緒に聞くから」
「え?」
「なに!?」
「2人で聞いてれば補い合えるし。それにたとえお前でもミリィと密室には入れて置けない」
「貴様・・・何が言いたい」
「魔が差すって事あるだろ?ミリィは可愛いから特にな。妻の身を守るのは夫の役目、危険物 を近づけさせないのは
当然だ」
「ディアッカ何言ってるのよ!」
「貴様!俺をどーゆー目で見てるんだ!!」
「そーゆー目でだ。とにかくミリィを返してもらう」
後ろでイザークがギャンギャン文句を言ってる。ミリィがいなければとっくに手が出てるだろう。そんな事より疲れている
ミリィの方が気になる。
「ミリィ平気か?」
「・・・・・・・・・あんなに話が長いとは思わなかった。普段そんなに話さないから・・・」
「昔からああなんだよ、民俗学の話を始めると止まらなくてさ。俺いつも途中で寝るから殴って 起こされてた」
「好きなのね、中断させて悪い事しちゃったね」
「いいんだよそんなの。それよりなんで俺に内緒にした訳?」
「内緒にしてた訳じゃないのよ。あれから色々と考えてね、ちょっと勉強しようと思ったの。でも ディアッカの知らない
所でって思っていたのかもしれない。ゴメンね、最初から言えばこんな事 にはならなかったね」
「まぁ何事もなかったからいいけど。そうだミリィ、来月のミリィの誕生日に能見に行こうか。この 前やってたやつ」
「え?」
「見たいんだろ?席取れると思うし。知識詰め込むより実際に見た方が分かり易いしさ」
「いいの?でももうSold Outのはずだけど」
「大丈夫任せて」
「・・・ディアッカ、もう売ってないのにどうやって席取るの?」
「ミリィはそんな事気にしなくていいから、だって見たいんでしょ?」
「う・・・見たいけど」
「ならいいじゃん。楽しみにしてて」
ミリアリアの望みは何でも叶えて上げるディアッカ。今回の公演も良い座席を確保した。
もちろん裏から手を回して・・・
2月17日
今日はディアッカと能を見る。映像でしか見た事のない日本の伝統芸能。ディアッカの趣味である日本舞踊にも重なる
ものがあるという。ディアッカの好きなモノを知るチャンスなのでとても楽しみにしていた。
本日の演目は能『班女』、狂言は『花子』
パンフレットによると『班女』は本来秋の出し物とある。日本には四季がありその季節でしか演じない演目が多いらしい
が今回は話の分かり易い物語を持ってきたとの事。
あの後少しだけ勉強をした。能と狂言の事、2つの違いなど映像を見ながら少しづつ、だけどなかなか頭に入っていか
ない。
まず言葉が難しい。物語は地謡という人達が登場人物の気持ちを伝えていくが何を言っているのか聞き取れないし分
らない。ディアッカにそう伝えると「慣れてくると謡も自然と聞けるようになるけど、初めてなんだから謡でなくて舞だけ見 てなよ。それだけでも分かると思うから。あのお面角度によって表情が変わるんだよ。上を向くと笑ってるように見える し下を向くを泣いているように見える、あれが不思議なんだ」
そう言われて映像を見るがいまいち分からない。だからナマで見れる日を心待ちにしてたのだ。
パンフレットを見るとあらすじが書かれている
『班女』−京都に住んでいた吉田少将は東国へ下る途中、美濃の国野上の宿に泊まった時に遊女の花子(はなご)と
契り合い、その証として扇を交換しあった。秋には東国から戻ると言ったきり少将からは何の音信も無くなる。花子は 打ち沈み約束の扇ばかりを眺めて客を取らない為、宿の長に追い出されあても無く京へ向かう。少将は東国からの帰 路に野上の宿の花子を訪ねるが既に追い出された後と知り急ぎ京へと上った。花子は少将を慕うあまり心が狂い都を さまよい歩くが少将の扇は肌身離さず持っていた。少将は花子との再会を願うべく賀茂の社を詣でる。その日は賀茂 の祭りで多くの参拝者が来ていたが、その中に取り交わした扇を手にする班女(花子)を御輿の中から見つけ従者を通 じて扇を見せるよう伝えた。班女は「これがなければ忘れる事もできるのに、持っていればまた会えるかと思うと大切な 形見を人に見せる訳にはいかない」と言って断った。少将は花子と取り交わした扇を見せ正体を現し再会を喜び合っ た。
『花子』−京に住むこの男、かつて契りを交わした女を少し離れた場所に囲っている。とても愛しい女だが妻の目が厳
しくなかなか会いに行くことが出来ない。一方夫が不貞を働いていると思っている妻は夜出掛けないよう夫を見張って いた。そこで男は一計を案じる「そんなに疑わしいなら一晩座禅を組んでその疑いを晴らそう、だが座禅を組んでいる 間は決して覗くな」と。一晩の自由を得た男は念の為太郎冠者に座禅衾を被せ花子の所へ向かった。妻は我慢できず に夫の所へ行くと太郎冠者が身替りとなっており激怒する。そして太郎冠者の変わりに座禅衾を被り夫の帰りを待っ た。そうとはしらない男は座禅衾を被った太郎冠者を労い花子との一夜を語りだす。そして座禅衾を取ると太郎冠者が 妻に代わっており驚き逃げて行った。
あらすじを読むと両極端で面白い。恋物語と不倫話。共に『花子』が出てくるけど繋がりがあるのだろうか?
開演のベル
ざわめきが徐々に静まり自然と空気が張り詰めていく
この空間だけ別世界な感じがする
木でできた通路と四角い舞台
正面に木の絵が描かれていてその前に囃子方、横に地謡
ものすごくシンプルな舞台
開幕
やはりナマで見ると全然違う。大きな振りもないし面も同じのを着け続けているのに悲しみ苦しみ喜びがちゃんと表れて
いた、不思議・・・。
演じている人は男性なのに女性にしか見えない。
『班女』はなんとなく自分と重なる所があるように思えた。少将と扇を交わして以来思うのは少将の事だけ。働かない花
子を宿の長が呼びつける場面。花子は幕から出てくるけど様子はうつろで歩みもとても遅い。心ここにあらずな状態が 遅い歩みに現れていて胸が痛かった。
『花子』はとても面白かった。これは能のように面をつける事も無く、シンプルな衣装を着て男性が演じている。能と違い
役者は大きな声で話し続ける。また違った魅力を感じた。一晩の自由を得る為に語る場面、うれしそうに花子とののろ け話をする場面、身替りが妻に変わっていて驚き逃げる場面。お行儀良くないかもしれないけど私はプッと吹き出して しまった。見ていて「ディアッカならどおするのかな?」とか「ディアッカもああやって他の女の人の所に行ったりとか・・・」 って考えてしまいチラッと横を見たらディアッカがこちらを向いて微笑みながら手を握ってくれた。「こんな事絶対無いか ら心配するな」と言われた気がした。
「ありがとう、とっても楽しかった」
「そぉ、よかった」
「言葉が分らなくてもなんとなく分かるものなのね」
「沢山見ていったら自然と言葉も分るようになるよ」
「そうね。素敵なプレゼントありがとう、ディアッカ」
「ん?これくらいたいした事ないし。まだ他にもあるから期待してて」
「まだあるの?なぁに?」
「それは後のお楽しみってね」
「ふーん。あ!ディアッカあれ!!」
ミリアリアが指差した方を見ると沢山の扇が飾ってあった。この特別公演には日本からも沢山の土産屋も来ており、そ
の1つの扇屋。 ミリィは珍しそうに手に取って開いて見ている。俺も扇を手にするのは久しぶりだったのでつい色々見 てしまう。
「ミリィ、プレゼントしてあげる」
「えっ、いいの?」
「なかなか買えないしさ、せっかく日本に興味持ったんだから手近に日本を感じられる物が
あった方がいいじゃん。それに俺も買うし」
「ディアッカも?」
「今の家に日舞のモノ持ってきてないから1つね」
「じゃあ私がディアッカにプレゼントするわ!」
「それだと物々交換じゃん」
「いいじゃない別に。今日の『花子と少将』みたいで」と頬を赤らめながらミリィは言った。
約束を交わし扇を交換した相手を忘れられず打ちひしがれ狂ってしまう女、それでも扇だけは肌身離さず持ち続ける。
彼女が『花子』と自分を重ね合わせているのを横で感じていた。戦後俺達も不安定な時期を過ごした。それもあるだろ
うしもっと前に・・・悲しみで打ちひしがれている時があった。あの時期と重ねたりもしただろう。
「ミリィ顔赤い」
「いいでしょそんなの。ディアッカどれがいい?」
「俺のは後でいいから、ミリィ先に探しなよ」と体を売り場に向かせた。
「もぉ!」と言いながらも扇を見始めた
暫くしてから「私これにする」と1つを手にした。それは俺が思った通りの柄「夕顔」だった。『花子』が少将に渡したのは
夕顔の扇。舞台で使うような鮮やかなモノでなく黒塗りの骨に地は片面が淡いピンクでもう片面が淡いスカイブルー、白 い夕顔が散らばり彼女の雰囲気ととても合っていた。
「それとてもミリィと合ってる」
「ホント?」
「うん、ピッタリ」
「ありがとう。ディアッカはどれにする?」
「そーだなー」と見回すと壁に飾ってある扇に目が留まった。表面は朱で金の箔の波が描かれている。手にすると裏は
深いカーキ色でやはり箔の波が描かれていた。骨も朱塗りで手にするとしっくりと馴染んだ。「俺これにする」
「この扇ディアッカの強さと深さを表してる感じ」
「そおか?」
「うん、それがいいわ」
「じゃあこれ。って俺の方が高いじゃん!」
「いいじゃないそんなの」
「ミリィの誕生日プレゼントなのに」
「いいの、私いつも貰ってばっかりなんだから」
「あーなんだかなー。ま、この後もあるしここはミリアリアさんにご馳走になりますか」
「そうそう」と頷くミリィ
開場を出て互いに扇を交換し合う。嬉しそうに笑うミリィ。
「俺達はすでに永遠を誓い合ってるけどこれはその証の1つな」と囁き頬に口付けをする
「うん」
大切そうに扇を手にするミリィが愛らしい
「なぁミリィ。せっかく扇を買ったんだからミリィも舞をやってみない?」
「?」
「日舞やろうよ、ミリィ覚えるの早いからすぐ出来るようになるよ。着物も似合うだろうし」
「無理よやった事ないもの。それに顔白く塗るなんてイヤ!」
「だからあれは一部の人だけなんだって」
「着物なんて着たことないし、重ね着して窮屈そうだし」
「大丈夫、浴衣もあるし。これなら1枚だけだから」
「でも、でも・・・」
「観念しなさいって。俺ミリィの舞見たいな、俺の誕生日にミリィの舞見せて」
「そんなの無理よ!だったらディアッカ見せてよ、今日私の誕生日なんだから!!」
「だって着物ないしー、ミリィに見せるなら最高なモノ見せたいじゃん。練習しないと見せられな い」
「私はやった事ないんだからもっと見せられません!」
「いいじゃん俺気にしないし」
「私が気にするの!!」
「ダメ、もう決めた!俺の誕生日なんだから俺のリクエストは聞いて貰うよ。明日ミリィに似合い そうな浴衣買ってくる
から楽しみにしてて」
「ちょ、ちょっとディアッカ!!」
そんな・・・・・あと1月ちょっとしかないのに踊れるようになる訳ないじゃない。
なんだか気分が暗くなってきた。今日って私の誕生日よね?どうしてこんな事に・・・足元がフラつき倒れそうになったが
横から手が伸び免れた。
「ミリィ、大丈夫か?」
声はとても心配そうだけど・・・「あなたのせいでこうなったんでしょ」と言おうとしたら唇を塞がれる。
「ホントは思いっきりしたいけど外だから遠慮しといてあげる」と楽しそうな声で言われた。
「・・・ディアッカ嫌い、誕生日にイヤな事するから嫌い」
「え〜ミリィ〜」
無視
「いい先生紹介するからさ。そいつ若いけど踊り上手いしいい男だからミリィ絶対に気に入る」
「・・・・・・・それって誰?」
「もちろん俺」
やっぱり
「当たり前でしょ、ミリィの浴衣姿なんか誰が人に見せるかっての」
「あなたに見せるのにあなたに習う訳?」
「そ。日々上達振りを見て上げるし」
「分ったわよ、やればいいんでしょ!やるわよ!!」
「その意気、その意気」
もうこうなったら意地でも覚えてやる!ディアッカを驚かせるんだから〜!!
「それはそれとして、まだ誕生日のコース終わってないから次行こう」
と手を引かれて私は歩き出した。
ほのぼのお誕生日観劇コ−スのディアミリです。
可愛いナァ、日本観光編書きたくなるのは・・・わたしだけ?
着物ディアミリ描きたくなるのは・・・わたしだけ?
ついでに着せて脱がせてしたくなるのも・・・わたしだけ?
ジョリコ様、我が儘言っておねだりしてすみません。
へへへへへへへ、このご恩はプリケツミリィカ−ドで・・・ダメ?
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